2013年7月22日月曜日

入院したら1日平均でいくらぐらいか-厚労省データからご紹介します

厚労省のデータから医療保険の入院日額などを選ぶ上で参考となる資料を見つけましたのでご紹介します。

データソースは「平成24年社会医療診療行為別調査の概況」です。


このデータは、入院患者に行った診療行為について保険医療機関(病院など)から国保連合会(審査機関)などに提出されたレセプト(診療報酬明細書)から集計されたものです。

レセプトには診療行為別点数が記載されていますが、医療費としては1点が10円に換算されます。

また入院患者が窓口で支払う金額は、3割負担の場合には1点が3円として計算されます。

以下の表では3割負担の金額(75歳以上は1割)として独自に換算した金額を表示しています。

被保険者の負担割合は、現状では小学校就学前は2割、70歳以上の一般の場合は1割または3割負担となっているので、この表の年齢階級では正確な換算が困難なのですが、大雑把な目安として前記割合で換算してみました。

参考
70歳以上75歳未満の方(高齢受給者)の自己負担割合は2割(平成25年7月31日までは1割)」となります。ただし平成26年3月31日までは負担割合が「1割」に凍結されています。
小中学生への医療費助成については、自治体が行っています。(例 千葉県では中学3年生までを対象に入院医療費などを助成しています。)

表1は年齢階級別にみた入院1回あたりの平均の費用(自己負担額)です。

(表はクリックすると拡大します)

表の右側には生命保険文化センターの資料より「胃がん」と「乳がん」の場合の3割負担額を比較のため併記しています。

この表より40歳~64歳では、入院したときの自己負担額の平均は151,488円となっています。

注意
高額療養費を考慮すると1回でこの金額を支払った場合、82,480円に減額されます。


その内訳は、初・再診123円、医学管理等1,275円、検査2,349円・・・・・です。

参考
表下段の「診断群分類による包括評価等(DPC)」とは、これまで医療行為の内容はお医者さん任せ(つまり出来高)であったため、とても検査が好きな先生は高い医療費を請求していました(つまり同じ病気の治療でも割高と割安がありました)が、それはおかしい(つまりぼったくりを防止するため)ということで、基準を設け(包括評価 → 定額制)その上で多少の裁量(出来高)も認める方式に変更となりました。この診断群分類による包括評価が逐次普及しつつあります。こうすることで全国一律の診療内容となり、医療費も安くなると厚労省は考えているようです。(でもカリスマ医師はご不満かも知れませんね。)


内訳としては、40歳~64歳の蘭で見ると、入院料が最も高く46,857円、次いで手術が32,120円となっています。

ですから医療保険は入院日額と手術が給付の中心となっているのです。

これからは日帰り手術、通院による投薬治療が多くなるので手術給付をなくして通院給付に切り替えましたという保険がありますが、手術給付金を少なくして会社が儲けるための口実にすぎないので用心しましょう。

また表から65~74歳の医療費が40~64歳の医療費よりも1万円程度高くなっていますが、これはいずれの年齢階級も3割負担として計算しているためです。

しかし実際は、70歳以上は1割負担(一部は3割)であり、また高額療養費の限度額も44,400円に下がりますから、自己負担額は逆転し65~74歳の医療費の方がかなり安くなっていると考えられます。

ただ入院1件あたりの点数としては40~64歳が50,496点、65~74歳の点数は54,109点となっており、高齢になるほど診療行為は増えています。


75歳以上の後期高齢者については自己負担が1割なので年齢階級別に見ると入院費用はもっとも安い50,423円となっています。


一方この表と生命保険文化センターの資料(胃がん、乳がん)を比較すると、ちょっと高すぎるような気がします。

生命保険文化センターの資料では包括評価方式を採用していませんが、医療費が高くなるようにだいぶ盛っているのもしれませんね・・・・・・よく分かりませんが。

さて次に年齢階級別にみた入院1日当たり費用を(表2)に示しています。
また(表3)には平均の入院日数と平均の食事療養費を示しています。



(表はクリックすると拡大します)

表2、表3より40歳~64歳の場合、入院日数の平均は15.5日、平均日額は11,493円(食事を含む)となっています。

もし入院日額5千円、手術10万円の医療保険に入っていると、給付見込額は、

5,000円×15.5日+100,000円=177,500円(平均日額は11,452円)

差額ベッド代を考慮しなければ自己負担額にぴったりの給付額となります。

でもがんなどの医療費が高い入院に備えるには、がん保険を別契約するよりも三大疾病特約か入院日額を2千円ぐらい上げた方がコストパフォーマンスがよくなります。


75歳以上の後期高齢者については1日あたりの自己負担額は2,755円です。(月額は高額療養費が適用され44,400円を超えることはありません。)

この程度なら年金だけの収入からでもなんとかなるかも知れませんね。

この国の社会保険の充実ぶりがよくわかります。

ですから定年退職された方が新たに医療保険を考える必要はまったくありません。
ましてや持病があっても入れる保険などは保険料をぼったくられるだけで、なんの得にもなりませんし、いざという時にも給付金は僅かであり、役にたちませんから入らないようにしましょう。

高齢者の方が考えるべきは、貯蓄をなるべく減らさないことだけです。


胃がんの場合入院1日あたり33,428円となっていますが、これは3割負担額を入院日数26日で割った金額であり、高額療養費を考慮すると実質は7,070円となります。(乳がんの場合の実質日額は3,737円です。)

ですから入院日額5千円、手術10万円の医療保険からは平均日額8,846円くらいが給付されますからそこそこ安心できる金額ではないでしょうか。

胃がんの場合の給付見込額
5,000円×26日+100,000円=230,000円
(入院26日として平均日額は8,846円)

乳がんの場合の給付見込額
5,000円×25日+100,000円=225,000円
(入院25日として平均日額は9,000円)


この例から入院日額1万円+がん入院日額1万円という保障がどれほどばかげているのかよくご理解いただけるのではないでしょうか。

保険を選ぶときには「保障性」だけに注目してしまいますが定性的そしてEmotional(感情的)な判断は保険屋さんを儲けさせるだけです。

このデータなどを参考に定量的、合理的に判断をしましょう。


参考

一生のうち医療費はいくら必要なのだろうか?

医療保険とがん保険を検討するときに参考となる入院日数、医療費等の資料

医療保険を選ぶ基準



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