2011年9月3日土曜日

長期の就業不能に対する保障の必要性(その2)

具体例で考えてみましょう。

A子さん(45歳女性)、パート従業員(組合健保加入)、週32時間、時給900円
乳がんが見つかり放射線治療を受けることとなった場合。

1 治療の内容

注意:以下の内容は私の聞きかじりの知識で書いており、専門の医師による監修などは受けておりませんので、必ずしも正しい情報とはお考えなさらないように願います。

早期乳がんの標準治療法は、
・乳房部分切除術(乳房温存術)
・腋窩リンパ節郭清
・術後の放射線治療

参考
腋窩:脇の下のくぼんだところ(リンパ節があり、がん転移の関所)
郭清:すべてを取ること
腋窩リンパ節郭清:がん転移の疑われるリンパ節をすべて取ってしまうこと

現在では、リンパ節をすべて取る前にセンチネルリンパ節(最初にがんが転移するリンパ節)の生検が行われるようになってきています。

これまでは、乳房切除術(リンパ節を含む)によりがんの再発可能性を低下させていましたが、乳房温存術と術後の放射線治療により同等の治療効果が期待できるようになって来ています。

これは乳がんが放射線感受性が比較的高いことによります。

乳房部分切除術だけでは30~40%の再発の可能性がありますが、放射線の照射によりこの値を5~10%以下に減らすことができるようです。

放射線療法は、週5回の照射(通院)を5週間、合計35日間に25回の照射が行われます。
(これに腫瘍のあった部分への照射が数回行われます。)

乳房部分切除後に放射線治療を行わず、再発した場合にも放射線療法を適切に行うことで効果が期待できる場合もあります。
この場合も週5回で5~6週間の期間となります。


2 医療費

詳細についてはこちらをご覧ください。


この資料にも放射線治療料52,800円が含まれていますが、入院期間中だけの治療費と思われます。

この場合、乳がんで25日間入院し、医療費合計が約160万円、保険の適用及び高額療養費からの給付を差し引くと最終的な自己負担額は合計9万3千円となっています。

この入院の後、引き続いて放射線治療のため5週間(35日)仕事を休んで通院した場合の治療費は次のとおりとなります。

放射線治療として、強度変調放射線治療(IMRT)を受けた場合、
1回目 保険点数3,000点(医療費3万円、3割負担額は9千円)
2回目 保険点数1,000点(医療費1万円、3割負担額は3千円)

したがって、25回照射を受けた場合の合計の自己負担額は、
9千円+3千円×24回=81,000円

この金額を同じ月に支払った場合は高額療養費80,100円を超えるので、実際の支払額は約8万120円となります。
(共済組合や一部組合健保では付加給付があるので、自己負担の上限は25,000円から3万円となります。)


長期の就業不能に対する保障は必要なのだろうか?(その1

長期の就業不能に対する保障の必要性(その3



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