2011年9月2日金曜日
長期の就業不能に対する保障の必要性(その3)
(表はクリックすると拡大します。)
3 健保組合からの給付
健康保険からの給付を表にまとめましたのでご覧ください。
自営業者などの国民健康保険(国保)とサラリーマンなどの健康保険(協会健保、組合健保)では給付内容に差がありますが、日雇健保は付加給付がないだけでほぼ同様の保障を受けられます。
被保険者と被扶養者についても傷病手当が付かないなどの違いがあります。
さてA子さんに対する健保組合からの保険給付ですが、治療費(療養の給付)7割が給付されるのは当然ですが、「療養のため労務に服することができないとき(入院、通院、自宅療養のため仕事ができないとき)」には「傷病手当金」が支給されます。
治療のため仕事を休んだ最初の3日間(土日祝日、有給でもOKです)は支給されませんが、4日目から標準報酬日額の2/3(66%)が支給されます。(最長1年6月まで)
A子さんの場合、週5日32時間、月128時間の労働時間とすると、
交通費5千円が支給されているとして
月間の支給額
128時間×900円+5千円=120,200円
標準報酬月額は、8級の118,000円となります。
(保険料を計算するときの区分により決まります。)
参考:A子さんの年収は130万円を超えるので夫の被扶養者とはなれません。
したがって健康保険から給付される標準報酬日額は、
標準報酬日額=11.8万円×2/3÷30日=2,622円
(この金額が仕事を休んだ日の日数分給付されます。会社の担当部署に申請してから給付までに約1ヶ月程度必要です。)
仕事を休んだ日数を次のとおりとすると、
入院 25日
通院 35日
自宅療養 20日
合計80日間に対して給付される傷病手当金の額は、
2,622円×80日=209,760円
となります。
当然その間の治療費についても保険給付があり、高額療養費も適用されます。
参考
高額療養費については年に1~3回までは月の支払が80,100円を超える額に適用されますが、4回目以降は44,400円を超える額に適用されますからさらに負担の軽減になります。また現在は事前に手続きすることで、病院での窓口で支払うときに高額療養費を適用した金額だけ支払えばよいように改善されています。
4 まとめ
以上を療養していた80日間についてまとめると、
支出
入院治療費 9万3千円
放射線治療費 8万120円
休職による遺失利益(80日分の給与) 314,667円
合計 487,787円
収入
傷病手当金 209,760円
差額 487,787円-209,760円=278,027円
したがってA子さんの場合、この差額278,027円が経済的なリスクとなり、貯蓄や医療保険などで備える必要があります。
たとえば、入院日額1万円(入院5千円+がん入院5千円)の医療保険に加入していれば、
入院25日ですから、25万円の給付
手術に対して10万円の給付
(通院3千円が付けられていれば、3千円×25回=7.5万円の給付)
合計35万円の給付(通院を加えれば42.5万円)が見込めますから、このリスクへの備えとしては十分と考えられます。
参考
有給休暇が使える場合、例えばこの場合10日間は有給休暇とすると、収入は8時間の労働に対する給与として7,200円支給されるので、傷病手当金よりも10日間合計で45,780円増加します。
参考
一部の健康保険組合では傷病手当金の上乗せ給付があります。
5 FPとしてのアドバイス
この例からだけで結論づけるのは多少乱暴かも知れませんが、傷病手当金により収入の66%が保障されていることはたいへん心強いものがあります。
したがって、
国民健康保険加入者(自営業者)及び健康保険の被扶養者(専業主婦など)以外の方(つまり健康保険の被保険者)にとって「長期の就業不能に対する保障」は必要ないと考えます。
このような場合にも、医療保険はいまだ十分に保障できていることから、
割安のネット通販の医療保険(三大疾病入院特約付)でなんら問題ありません。
あるいは通院特約を充実されるだけで十分と考えます。
長期の就業不能に対する保障は必要なのだろうか?(その1)
長期の就業不能に対する保障の必要性(その2)
保険や家計全般の見直し相談についてはこちらをご覧ください。