2016年5月1日日曜日

人生の後半で必要な医療費と介護費用はいくらか(その3)


以上は実際に介護給付を受けた受給者一人当たりの平均額ですが、国民医療費と同様の考え方、つまり年齢階級別に介護給付の期待値(国民介護費)を算出してみます。

参考
 公式には「国民介護費」という用語はありません。私のオリジナルです。


注意
国民介護費の集計要領に興味のない方は、途中を飛ばして最後の結論部分をお読みください。
きっとあなたのマネープラン作成のお役に立ちます。


では国民介護費を計算してみましょう。

まずその年齢における要介護となる発生確率と期待値は、

合計受給者数 ÷ 人口 = 発生確率

発生確率 × 一人当たりの自己負担額 = 期待値(国民介護費)


介護給付費等実態調査では、1年間の年齢階級別受給者数のデータがありませんので、推計しています。

推計には次のデータを使用しています。

年間継続受給者数 約366万人
(この方たちは1年間を通して介護給付を受けたことになります。)

名寄せによる介護サービス年間実受給者数 約471万人

この471万人のうち366万人は1年間を通して受給者でしたが、残りの105万人は年の途中で介護認定され、数ヶ月間だけ介護給付を受けた方々になります。

したがってこの105万人は平均して6ヶ月間給付を受けたものと考えると、

366+105/2=418.5万人

1年間の合計受給者数としてこの推計値を使うことにします。

参考
1年間の受給者の延べ数としては5,969万人になります。

合計受給者数を年齢階級別、要介護度別に案分し集計すると、国民医療費と同様の次のグラフが得られます。


40~64歳の階級では、数値が小さすぎて棒がなくなってしまいましたが、次のような金額となっています。

要支援1,2 94円
要介護1  50円
要介護2  93円
要介護3  91円
要介護4  89円
要介護5 114円
合計     531円

531円が40~64歳の階級の国民介護費(右の目盛り)となります。

ここで国民介護費の意味は何かというと、起こりうる確率にその際の金銭的なリスク額をかけたものなので、期待値と同じです。

例えば80~84歳の年齢階級では、統計的に1年間に介護費用として自己負担する金額が4万5千円くらいとなります。

保険会社の介護保険では要介護2以上の場合に給付金がもらえますから、要介護2以上の場合で計算すると2万8千円となります。(これが介護保険の原価、純保険料に相当します。)

グラフより、95歳以上では国民介護費が約19万円になっています。

現実的には、この年齢において要介護5、施設サービスを受けると、1年間の自己負担額は約35万円ぐらいとなりますが、受給者数の人口比が約60%(つまり40%の人は受給者ではない)ですから、35万円に人口比(発生確率)を掛けると20万円前後まで下がってしまうのです。

最後に平均寿命まで国民介護費を累積した金額を折れ線グラフに示しています。(左目盛り)

介護保険は平均寿命後に出番が来ますから、国民医療費の統計が85歳以上で年齢階級を切っているのに対して、年齢階級が90~94歳、95歳以上と2つも階級を増やしています。

このグラフでは、国民医療費と横並びで85歳以上の年齢階級に90~94歳、95歳以上の階級も集約しています。

グラフより、65~64歳の年齢階級で平均寿命までの累積介護費は約95万円となります。

つまり平均寿命まで生きたとすると、介護費用として50%の人は合計95万円以下の支出で収まり、50%の人は95万円よりも高い支出になります。

この試算結果より介護費用として300万円、400万円も支出する方はそれほど多くはないと考えられます。

 ちなみに70~74歳の方が要介護となられても、高額介護合算療養費を適用すると、世帯全員の1年間の医療費と介護費用を合計した支払額が56万円を超えないようになっています。(仮にこの限度額の支払いが5年続いたとしても合計280万円です。)

 ですから家計として医療費+介護費合わせたリスクの最大は、1年間で56万円ぐらいと考えてよいのです。

 75歳以降の後期高齢者についても限度額は56万円であり、被保険者の負担能力に応じてきめ細かく(つまりもっと安くなるよう)限度額が設定されています。

 注意
 介護サービスもピンキリですから、当然高級な介護施設を利用した場合には数千万円の支払いとなることもあります。


<結論>

以上より人生の後半に必要な累積医療費は、65歳を基準として計算すると約202万円、累積介護費用は約95万円が一つの目安となります。

夫婦二人の世帯の老後生活資金として1ヶ月25万円、1年間で300万円、貯蓄300万円以上が確保されているとすると、この程度の家計のリスクはそれほど深刻な額とは言えません。

したがってこれまでの分析結果から言えることは、老後生活資金の準備(公的年金と貯蓄を増やすこと)に全勢力を注ぎ込むことで、医療や介護のリスクも十分にカバーできるのです。

不安が大きいとつい「介護」や「年金」などのことばに引き寄せられて保険を買ってしまいそうですが、その行動は不幸への入り口に入ってしまう行為なのです。

はっきり言ってこの超低金利の世の中で買っていい保険などありません。

地道に国民年金や厚生年金の保険料を支払い、将来に備えてこつこつと貯蓄すればきっと明るい未来がやって来ます。


人生の後半で必要な医療費と介護費用はいくらか(その1)

人生の後半で必要な医療費と介護費用はいくらか(その2)



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