2011年10月8日土曜日

保険選びをする時の基本的な考え方

保険選びに関する私の考え方を記します。

行動ファイナンス理論に「メンタルアカウンティング」という分析結果があります。

「心の会計」と訳されていますが、いわゆる「お金に色を付けて管理したがる」傾向が多くの人に観察されるそうです。

毎月の支出が多く節約に努力している人でも、臨時的な収入があると、理由にならない理由を付けて、たとえば「自分へのご褒美」と言って無駄遣いをしてしまう人。

未来の10万円よりも目先の1万円をうれしがる人。

でもはっきり言って「お金」には色がついていません。

ただ現在価値の比較として「損」なのか「得」なのか、「多い」か「少ない」か、または「同じ」なのかがあるだけです。

仕事で汗水垂らして得た10万円もパチンコで稼いだ10万円も、保険のお祝い金の10万円も「絶対的な価値」は等しく10万円なのです。

毎月の給料が支払われたときは「当然」と思い、思いがけない臨時の収入があると「舞い上がるほど嬉しい」と思ってしまうのが普通なのかも知れませんが、「お金」を考えるときには「感情的」に見てしまうと「損」となる場合が多くあります。


貯蓄の場合、「これは使えないお金」と考え、心にカギを掛けてしまうような場合も「メンタルアカウンティング」なのですが、これはたいへんよい習慣だと思います。


個人を相手にするビジネス(金融)の世界では、商品開発やマーケティングにこの「メンタルアカウンティング」が応用(悪用)されています。

つまりお客様に「お得感」を持たせつつ利益率を拡大する方法として利用されています。

一番良い例が「毎月分配型の投資信託」です。

合理的に考えれば、「毎月分配型の投資信託」は毎回配当に掛かる税金及び長期的な複利効果がないため「損」な商品であることは明らかです。(証券会社の人には常識となっています。)

また保険商品としては、特約の「お祝い金」や「女性疾病」などがあります。

「お祝い金」や「女性疾病」などについては、基本となる疾病の保障は確保されているのに加えて追加の保険料が上乗せされるので、保険会社側としては客単価のUPが図れる強力な武器となっています。

千円程度のわずかな保険料で付けられる特約という印象を契約者に持たせ、「お得感」をアピールしていますが、事実はお得ではまったくなく、原価が40%程度なので、保険料の60%は保険会社(営業社員)のもうけとなっています。
(たとえば特約としてお祝い金10万円を契約した場合、その保険料分を貯蓄していたら20万円以上貯まっていることになりますから、金融商品としての特約は「損」な商品であるといえます。)

なぜそのような「損」な契約をしてしまうのでしょうか?

それは契約者側には「支払」と「見返り(配当、給付)」との均衡が取れているのかどうか判断できていない所をうまく利用されているのです。

一方、保険会社側は、死亡確率や疾病の確率など詳細なデータを保有しており、どの特約の原価が何円で利益率何パーセントで売るのかが計算されています。

付加保険料に関する投稿で説明したように、保険は確実に保険会社側が儲かるように設計されているのです。

金融商品については、法律でリスクや資産の運用状況、手数料などの詳細について販売業者に説明責任が課されており、透明性が格段に進歩しましたが、保険における保険会社と消費者間の情報格差はいまだ極めて大きなものがあります。

というより、保険の実体はいまもって厚いベールに包まれていると言ってよいでしょう。


では一般消費者は保険選びをどうしたらよいのでしょうか?

それは、「必要とする金額」がもっとも安い保険料でもらえる商品を選ぶことです。

「必要とする金額」とは「死亡したとき」に必要なお金。(遺族補償)

そして「病気になったとき」に必要なお金です。

死亡したとき+三大疾病+介護+身体障害+・・・このような特約は典型的な「ムダ」です。

病気になったとき+女性+がん+お祝い金+・・・これも「ムダ」の典型です。

保険金や給付金が支払われる原因は「特約」により様々あります。

しかし家計のリスク管理を考えた場合、病気のときなどに支払った合計金額に対して、理由はともかく保険からその額に等しい現金が支払われればよいことになります。

病気の種類と特約がうまく一致しなくても、とにかく必要なお金が給付されればよいのです。

女性疾病やがんなどの場合、不安に駆られてとにかく特約を付けたがる人がいますが、主契約の医療保険の入院日額と手術給付でほぼすべての病気をカバーできるようにするのが保険選びでは正解になります。

特約に関する誤解として、主契約で足りないところを特約で埋め合わせると考えておられる人がいますが、正しい理解として、特約は主契約の「上乗せの保障」になります。

以上から保険選びは、質(給付理由)は重要ではなく、量(金額)が重要なのです。

一方「主契約+特約」の組み合わせで支出を賄っても、「主契約」だけで賄っても保険の原価率は「同じ」なので損得はないと考える方がおられるかも知れません。

厳密にはそのとおりなのですが、多くの方は、主契約で保障が十分なのに、更に「特約」を上乗せしてしまう(保障をふくらましてしまう)ことが「ムダ(損)」なのです。

「特約」選びにはまり込むと、「感情(不安心理)」や「お得感」によって判断してしまいます。

賢い保険選びのためには「主契約は必要(額)を満たしているか?(支出=収入)」だけを考えて判断することが大切です。

また蛇足として、「保険に何を求めているのか」をお客に言わせて、それに合いそうな保険をお勧めし利益を得ているFPがいますが騙されてはいけません。

保障内容などの「質」の世界にはまり込むと高額な保険を契約させられてしまいます。

大切なことは保険料と給付内容の「量」の比較なのです。

でもこれができるFPはほとんどいないのが現状です。
(保険屋さんは、他社の商品と比較し誹謗中傷にあたるような行為は法律で禁止されています。)


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