金融庁がそう言っています。
庶民の味方「金融庁(森信親長官)」が、貯金大好きな国民のために、どうしたら老後資金を増やすことが出来るのか、懇切丁寧に説明?している「金融レポート」についてご紹介します。
これまでの金融庁は、銀行や保険会社、証券会社などにちやほやされて、まったく国民のための行政をして来ませんでしたが、森長官に代わってからは銀行などに背を向け、国民にきちんと向き合う姿勢を鮮明にしています。
どうしてなのかと言えば、デフレ、超低金利の経済状況の中で、預貯金だけでは国民の老後生活が悲惨なものとなることは十分に予測されることから、国は「貯蓄から投資へ」と一生懸命に旗を振っているものの、年金保険などの投資商品はどれもひどいものばかりで、儲かるのは販売をしている銀行、保険、証券会社だけであり、国民が得るのは「リターンのないリスクだけ」となっているからなのです。
世の中の金利がほぼ0%ですから、いろいろな投資商品を設計したところで、ごく僅かな利益は販売側が吸い取ってしまい、多くの投資商品では国民が得られる利益は0円以下となっており、あまりにもひどい状況にあります。
そのようなことから、国は銀行、保険、証券会社の利益のために「貯蓄から投資へ」と旗を振っているように見られることを反省し、姿勢を正すため、金融庁は国民の側に立ち「金融レポート」を作成しているのです。
そこで今回の「金融レポート」では蛮勇を奮い、それぞれの投資商品について、はっきりとだめだしをしています。
例えば投資信託について、
「金融機関においては、短期的な利益を優先させるあまり、顧客の安定的な資産形成に資する業務運営が行われているとは必ずしも言えない状況にある。」
つまり顧客は長期的に資産を増やしたいのに、手数料の高い毎月分配型の投資信託を売りつけられ、割高な手数料と信託報酬を取られたあげく、全く増えない投資信託を買わされているのです。
さて投資信託についてはまだ序の口で、もっと悪い商品がここ最近倍増しています。
それが「一時払い外貨建て保険」なのです。
こちらの投稿にも書きましたが、類似の商品では一時払い1,000万円の保険が売れると、銀行には80万円ぐらいの手数料が支払われ、担当者には30万円ぐらいが翌月に支払われることになります。
私は過去に同種の保険商品を販売していましたから、これほどうま味のある保険は他に見当たりません。
ですから銀行としては全力でこの保険を顧客に勧めていることでしょう。
「金融レポート」の分析でも銀行の販売手数料でダントツに伸びているのが「一時払い外貨建て保険」なのです。
言い訳ではないのですが、外貨建ての保険商品自体は決して悪いものではありません。
問題なのは、一時払いの段階で10%近い金額を、銀行と保険会社がサヤ抜きしていることなのです。
参考
保険の営業が個人としてお客を見つけ、一時払い1,000万円の契約を取るのはかなり苦労しますが、銀行には信用力があり、エアコンのきいた窓口で待っていれば、カモネギさんが相談に来ますから、その手数料は5,000円ぐらいでよいと私は心から思っています。(つまり30万円の手数料の内、29万5千円はぼったくりだ~~!・・・個人的見解です(^^;)
毎月分配型の投資信託は手数料が高いと言っても、販売手数料は投資額のせいぜい2~3%程度ですから、10%もぼったくる外貨建ての保険商品は超悪質です。(ファンドラップの手数料も2~3%程度)
そうは言っても、「一時払い外貨建て保険」の仕組みからそのような手数料が合理的に説明できるのならやむを得ないかも知れませんが、「金融レポート」では銀行の手数料稼ぎの実態を次のように辛辣な文章で書いています。
「銀行における金融商品別の手数料収益を見ると、販売額以上に、保険の占める比率が高く推移している。この背景として、一時払い保険の販売手数料率が、投資信託等の金融商品と比べ、高めに設定されていることが挙げられる。特に、外貨建一時払い保険の手数料は、複雑な仕組みの商品販売が増えていることもあり、年々上昇傾向にある。」
「貯蓄性保険商品の中でも、近年、運用を定額部分と変額部分に分けた一時払い外貨建 保険* の販売が伸びている。仕組みとしては、定額部分を外国政府が発行する債券等で運 用し、運用期間終了時に、当初払い込んだ(外貨建の)保険料全額を最低保証するととも に、変額部分は元本保証のない投資信託等で運用しており、それに外貨建の死亡保険を 組み合わせるといった、内容が複雑なパッケージ型の商品となっている。 一方、このパッケージ商品を構成する外国債券と投資信託、(掛け捨ての)死亡保険を別々に購入・契約することでも、このパッケージ商品と同等の経済効果を得ることができる。 例えば、豪州ドル建ての一時払い保険と、それと同程度の経済効果を得られるように豪州国債と低コストの投資信託(あるいは ETF)、掛け捨ての死亡保険を組み合わせた場合とで、顧客の支払いコストを比べると、後者の方が10年で10%程度低くなることがある。また、比較的単純な商品を個々に説明することで、説明の負荷もパッケージ商品より軽くなるものと考えられるが、今回の検証においては、金融機関代理店の中で、このような代替策を提案しているところは見られなかった。このように、比較的単純な商品を個々に提供することで、より低コストで同じ経済効果を得られる選択肢があるにもかかわらず、顧客に対し、そうした情報提供を行わないまま、商品構成が複雑なパッケージ商品を提供し、高い手数料を徴収するといった行為は、顧客のニーズよりも、販売・製造者側の論理で金融サービスを提供しているのではないかとの見 方ができる。」
つまり割高で複雑な保険を買うより、単純な投資信託と掛け捨ての保険を組み合わせれば10%も安いですよ!と言っています。1,000万円の10%は100万円ですから、保険を買うことで100万円も損をしていることになります。
*ニッセイ外貨建て一時払い変額年金保険「ラップドリーム」のことかも知れません。
金融庁もここまで言うかね~~
参考
銀行の窓口のお姉さんは「代替策を提案なんて言われてもムリ ---」と思っていることでしょう。私が保険屋さんだったときの同僚も外貨建て保険商品の仕組みを正しく理解している人は皆無(円高・円安などの為替がまったく分かっていない)でしたから、つまり仕組みを知らない人が「一時払い外貨建て保険」を売っているのです。ただしこれが売れたらいくら儲かるかは爪の先まで良く理解していました。
この他にも、
「また、顧客は金融機関が販売する商品のリスクがどこにあるかが分かりづらい、といった「情報の非対称性」も存在している。」
情報の非対称性=顧客はアホで銀行は悪賢いということ
つまり高額な手数料にはまったく根拠は無く、この保険販売は、顧客の無知につけ込んだ悪徳商法だ・・・と言っているように私には思えます。
ところで、顧客の目的が「お金を増やしたい」とするなら、なぜ投資信託に「生命保険」を付ける必要があるのでしょうか。
一説には相続税を下げるためと言われていますが、しかし大半は保険会社の都合と言うのが正しい見方だと私は考えます。
顧客がお金を増やしたいのであれば、正しい選択支は、手数料の安い投資信託を買うことです。
余計な保険部分はいらないのです。
たぶん一時払いで1,000万円を払える人は、生命保険も十分に掛けているはずですから、それ以上保険に入る必要はないのです。
ではなぜ投資信託に生命保険を付けた「一時払い外貨建て保険」として販売されているのか。
保険業法によると、生命保険会社が扱える商品として「人の生存又は死亡に関し、一定額の保険金を支払うことを約し、保険料を収受する保険」と規定されており、保険会社は投資信託だけの販売はできないのです。
学資保険も同様に、加入する父母は子供の教育費を手当てしたいと思っているだけなのですが、「かんぽ」は保険会社ですから、どうしても「保険」の部分をくっつけて商品化しないと売れないため、しょうもない「生命保険」もパッケージで加入者は買わざるを得ないのです。
つまりお金を増やしたいだけの人は、手数料の安いインデックスタイプの「投資信託」が最も賢い選択であり、高額な手数料をぼったくられ、おまけにいらない保険まで付けられている「一時払い外貨建て保険」などは買ってはいけないのです。
しかし多くの国民はこのような裏の状況をまったく理解していません。
FPの立場からすると、投資信託などの「投資」が避けられ、まったく同じリスクでかつ割高な「保険」が売れている現状は不可思議と言うほかありません。
つまり日本国民は証券会社は怪しくて、銀行は信用できると思っているのでしょうが、いかに金融知識(ファイナンシャル・リテラシー)が不足しているのかつくづく実感させられます。
そこでFPとして、私ははっきり言います。
「一時払い外貨建て保険」は買ってはいけません。
参考
つみたてNISA・・・金融庁がお勧めする老後資金作りの決定版
参考
私が考える保険会社の超低金利対策
<貯蓄性保険>
円建て年金商品 → 「トンチン年金」化により、保険会社のリスクは回避
変額年金 → 外貨建て+一時払いにより利回り改善、窓販の販売手数料上乗せ
介護保険等 → 定期保険との抱き合わせ販売強化
従来商品 → 値上げ
<定期保険>
生命保険 → 値下げ、多様化、貯蓄性保険とのパッケージ化
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