2017年3月28日火曜日

トンチン年金の真実


○トンチン年金のしくみ

生保各社から「トンチン年金」が発売されています。

その理由付けとして「死亡保障」よりも「生存保証(生きるリスクへの保障)」を重視しているとアナウンスしていますがウソ八百です。

その実態は、止むに止まれず「トンチン」しかなかったのです。

保険会社は今の「マイナス金利」にほんとうに苦しめられています。

契約者から預かった責任準備金の運用先がなく、日本国債に投資してもまったく増えないのですから。

例えば第一生命の「しあわせ物語」では15年間こつこつと積み立てても返戻率がわずかに102.3%。

この場合の実質利回りは0.33%。

でも「しあわせ物語」はまだ良心的です。
なぜなら契約者から預かった責任準備金を保険会社として必死で運用し、契約者が支払った保険料に僅かながら利息を上乗せして返してくれるからです。

しかし昨年日銀がマイナス金利政策を導入すると、責任準備金を運用してもまったく利息が付かず、せいぜい保険料をそのまま返すだけ(利回り0%)となってしまったため、年金保険としては「意味ないじゃん」という状況となってしまいました。

そこで苦し紛れに保険会社が考え出した(すでに300年前にアイデアがあった)のが「トンチン年金」という訳です。

しくみは、責任準備金の運用益が0円ですから、結局契約者が支払った保険料がそのまま保険金の原資となり、契約者同士が掛金(保険料)のぶんどり合戦をするのが「トンチン年金」なのです。

「トンチン年金」では生き延びた人が勝者となり、早く死んだ人が敗者となるのです。

これが契約者にとってよい仕組みなら、300年前のアイデアですから、年金保険が発売された当初より採用されていてもよいと思うのですが、保険会社としてもさすがに「これはないよな~~」と思っていたところ、背に腹は替えられず、マイナス金利となってしまっては「トンチン年金」しかないと採用に至ったのです。


では具体的に「トンチン年金」の仕組みを考えてみましょう。

今1,000人が「トンチン年金」にそれぞれが保険料1万円を支払ったとします。

合計保険料は1,000万円です。

まず早く死んでしまった人には7,000円(保険料の7割)が支払われます。(つまり早く死ぬと3,000円の損となります。)

これは全員が貰えるので700万円が支払に消えます。

そうすると保険料の残金は300万円となり、これを保険会社と長生きした人で山分けします。

長生きした人が5人だとすると、この5人にはすでに7,000円は勘定されていますから、返戻率200%として、残りの13,000円が支払われ、5人合計で6.5万円が給付され、そして残りの293.5万円が保険会社の取り分となります。

生き残りが5人ではなく50人でも、年金の支払額は合計65万円ですから、保険会社は235万円の儲けとなります。

とんでもないぼったくりです。

でもひどいと思われるでしょうが、これでも原価率は約70%以上ありますから、保険としては良心的な部類なのです。

なぜこのように保険会社がぼったくるのかというと、20年先の平均寿命がどうなっているのか保険会社としてもまったく分からないので安全率は高くしておかないと心配で心配で夜も眠れなくなるためなのです。

平均寿命の各種予測値はありますが、100%それを信じている保険会社などどこにもありません。

来年の金利も分かりませんし、10年後の医療技術も正確に予測することもできませんし、まして20年後の死亡率などあてにできません。

したがって保険会社として、経営上のリスクを担保する方法は、できるだけ安全率を高くし、つまり将来保険金として支払う予想金額を10倍ぐらいに膨らませて見積もり、保険料を集めておくのです。

そうすると長生きする人が2倍や3倍になっても契約どおり年金を支払うことができるのです。

アクチュアリーがいくら計算したところで、そんなものを信じて経営をしていたら、保険会社は10年も持たないのです。

つまるところ保険会社を健全に経営するためには安全率を高くする(危険差損で稼ぐ)ことしか方法はないのです。

以上より、「トンチン年金」とは、契約者から集めた保険料がそのまま生存者への年金と保険会社の収入となっているだけなのです。(いわゆる博打と同じ原理で、参加者から集めた賭け金(保険料)を勝った人と胴元が分け合うシステムと言えます。=ゼロサムの原理)

マイナス金利の現状となっては、ついに保険会社もやってはいけないことに手を出さざるを得なくなったという訳なのです。

ついに保険会社も博打の胴元です。
どこにプライドがあるのでしょう・・・


○「人生100年時代」は本当?

  最初に次のグラフをご覧ください。

出典元:国立社会保障・人口問題研究所「総人口,高年齢区分(70歳,80歳,90歳,100歳以上)別人口」、グラフは川島FP作成

たぶん第一生命が使ったのがこのデータです。

わざとグラフを見せず、2050年に100歳以上の人口が70万人という数値だけを示しています。

でもこのグラフが示しているのは、2050年に70万人となるのは異常値であり、団塊の世代が100歳を超えるようになるため(グラフではこぶの部分)であり、その後2065年までは70万人を超えることはありません。

このデータでは2074年に本当のピークがあり、この年の100歳以上の人口が約88万人と推計されています。

たぶん医療技術の高度化などによる寿命の伸びと人口減少を相殺すると、2074年頃が100歳以上の人口のピークとなるようです。

でも「2074年に100歳以上の人口が88万人」と言っても誰もそんな遠い将来のことなど興味がないでしょうから、「2050年に100歳以上の人口70万人となり2015年の10倍にもなる。」と言って脅かしているのです。

いやだねー保険屋のやることは。

それに人口問題研究所の推計は本当に正しいのか?
という疑問もあります。

シミュレーションとはいろいろな前提で試算したものであり、このグラフで使用した数値は「出生数中位、死亡数中位」を前提としています。

つまり待機児童0政策が行われないから出生数は伸びず、医療技術の進歩ではips細胞の利用も無視して推計していますから、たぶん大はずれの推計になると思われます。

この推計をした人口問題研究所の人もそんなの分からないから、出生数が伸びた場合や死亡数が減った場合も計算してますよといろいろなデータを示しています。

結局いろいろ試算しておけばどれかが当たるだろうという推計なのです。(シミュレーションとは本来そういうものなのです。)

でも保険屋さんはいろいろの前提を隠してしまい、自分に都合のよい数字だけを使っているので、保険屋さんの言うことを鵜呑みにしてしまうマスコミの人は気を付けてください。

まあ誰だって未来は分からないのです。

ですから誰にも分からない未来について、まことしやかに「人生100年時代」などと言いふらすのはどうかとも思いますし、それに乗せられる方もばかげています。

分からない未来を心配するよりメタボやがんを心配しなさいと私は言いたい。

それにこのままマイナス金利が続くと、2050年にはニッセイや第一生命があるかどうか分かりませんから、最も信頼できる、そして超優良な国民年金の保険料を払いましょう。

国民年金の返戻率は197%(実質利回り2%)ありますから、今の世の中でこれに勝る年金保険はないのです。(超低金利で保険会社の年金保険は屑になりましたが、国民年金は超優良な年金保険となりました。)

参考
国民年金の保険料を16,490円とすると
10年間の保険料は、
16,490円×12月×10年=1,978,800円
これに対して65歳から85歳まで受け取る年金額は、
780,100円×120月/480月×(85歳-65歳)=3,900,500円
(返戻率197%)
同様に100歳までの返戻率は約345%(支払った保険料の約3.5倍)


○平均寿命についての誤解

参考
男性の平均寿命は80.8歳ですが、70歳の人が「おれの寿命はあと11年ぐらいか」と考えるのは間違いで、平均寿命とは生まれたばかりの0歳児の寿命で有り、70歳では平均余命が使われ、この場合は15.6年になります。(つまり70歳の人は15.6年後に1/2の人が生存しています。)

 この平均寿命に関する誤解はよくある話で、特にある一定以上の大人の人はそうかも知れないですね。

でも今では中学校でヒストグラムを習っていますから、いわゆる代表値に対する理解は進んでいます。

代表値とは、平均値や中央値(メジアン)、最頻値(モード)などです。

分布が左右対称の釣り鐘型の場合はこの3種類の代表値はほぼ重なりますが、平均寿命や平均年収などは分布が片方に広がるため平均値が分布のピークとずれてしまいます。

そうした場合、よりピークに近い中央値や最頻値などがよく使われます。(と中学校では教えています。)

と言うことで第一生命に中学校の内容を教えて貰ってもそれほどありがたくはないね~~


○トンチン年金は病気の人、がんの人は大歓迎

トンチン年金ではすぐに死にそうな人は大歓迎です。

ですから「おれは絶対に死なない。」と思っている人だけ入りましょう。

結論
「トンチン年金」ってほんとうにいやな保険だね~~


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