だからがん保険に入りましょうと保険屋さんはすすめます。
でも入院してお金がかかるのはがんだけではありません。
医療保険は、入院したときの経済的負担を担保してくれるものなので、いろいろな病気の経済的リスクの大きさを知らないと、がんにばかり保険料をつぎ込んだ結果「ハズレ」が出てしまい、大きな出費となる危険性があります。
次の表は、病気の種類別に「経済的リスクの大きさ」を順番に並べたものです。
データソースは、全日本病院協会の疾患別の主な指標(2013.1-3)です。
表の医療費は、保険点数に×3円(3割負担)とした額です。
経済的リスクとは、各疾病の発生確率にその疾病の入院費用を掛けたもので、考え方として期待値と同じです。
経済的リスクが高い病気ほど、医療保険や貯蓄で備えなければならないものと言えます。
各疾病の発生確率は、2013年1月-3月の入院患者数3,976人を分母として、各疾患の患者数を分子として算出しています。
具体例:脳梗塞の経済的リスクの計算
入院患者数 282人
医療費 159,628(点)(3割負担\478,884)
経済的リスク =(282人÷3,976人)×478,884円 =33,965円
この表より、ベスト5にはがん(悪性新生物)がありません。
乳がんなどは13位です。
1位は脳梗塞、3位が脳出血となっており、入院日数は28日、40日といずれもかなり長期となっています。そしていずれの病気も男女差はありません。
つまり三大疾病の中で経済的リスクが高いのは、1位が脳疾患で2位が狭心症、3位ががんとなっています。
それぞれの入院患者数は、胃の悪性新生物が181人、脳梗塞が282人、脳出血が114人、狭心症は358人となっています。
脳梗塞は胃がんより患者数が1.6倍、入院費用も1.6倍なので、これを掛け合わせた経済的なリスクは、脳梗塞は胃がんの2.6倍も高いのです。
医療保険を選ぶときにがんの保障ばかり手厚くしていると、最もありそうな現実は脳梗塞や脳疾患で入院してしまい、長期かつ高額な入院費用に対して保険からの給付金では不足してしまう事態なのです。
胃がんなどの入院費用は30万円以下ですが、脳梗塞は約48万円、脳出血は約80万円もかかるのです。
このデータが示していることを合理的に考えれば、がん保険よりも脳疾患保険の方が必要性が高いと言えます。(そんな保険はありませんが・・・)
表から、2位は肺炎となっています。
肺炎の平均入院費用は約18万円と安いのですが、入院患者数が690人もいますから、発生確率が高くなるため、経済的なリスクが高くなっています。
4位の大腿骨頸部骨折は女性にぜひ知っていただきたい病気です。
高齢の女性に発生しやすく、長期入院かつ高額な医療費がかかります。
乳がんの入院費用は約23万円程度ですが、大腿骨頸部骨折は約59万円にもなるのです。
そして入院患者数は、乳がんが109人に対して大腿骨頸部骨折は123人もいるのです。
80歳を過ぎてから、この病気により入院せざるを得なくなると、肉体的にも経済的にも深刻な影響があります。
終身の医療保険が最も必要になる状況とはこのような場合なのです。
*保険会社へのアドバイス
大腿骨頸部骨折と膝関節症は女性の割合が高いので女性疾病に加えるべきです。
(乳がん患者の0.9%は男性が含まれているのに女性疾病に入れているのですから、考え方としては同じだと思うのですが・・・)
したがって女性は乳がんばかり気にして終身の医療保険を選んでしまうと、将来とんでもないことになるかも知れません。
また医療保険に女性疾病特約を付ける方が多くおられますが、経済的リスクから見た結論は男女ともに「三大疾病特約」の付加が正解となります。
最後に、この表があなたの医療保険選びにお役に立てることを願っています。
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