2014年8月20日水曜日
30代、40代の独身女性へ・・・FPの心からのアドバイス
女性の保険加入率が毎年増加しています。
少子高齢化により全般の保険加入率は頭打ち状態なのですが、男性が減少傾向なのに反して女性の伸びが顕著なようです。
女性には特に介護保険と年金保険が売れています。
その原因として、社会保険(公的保障)、具体的には公的介護保険や厚生年金・国民年金に対して不安があり、自分の老後への備えは自助努力でと考える人が増えているようです。
そうした女性の不安な心理状況は十分に理解できますが、30代40代で介護保険や年金保険に加入することが適切かというと、FPとしての意見は「その判断は間違っています」ということになります。
その理由は、
1 現状の介護保険と年金保険の商品性に問題あり
現在は超低金利です。したがってこの状況で発売される保険は史上最低の予定利率の商品であり、貯蓄性はほとんどないと言ってよいものです。
参考
貯蓄性の高い保険の販売停止相次ぐ
生まれたときからデフレ経済で、一度もインフレ経済を経験していない世代にとって、30年間こつこつと貯蓄し、返戻率が116%の商品がとても魅力的に見えるかも知れませんが、20年前までは保険の予定利率は4~6%もあったのです。
もし予定利率が5%(実質利回り4%)の年金保険とすると、30年後の返戻率は187%になります。
参考
月額保険料を1万円とすると、30年間の累計保険料は360万円となるので、返戻率116%なら約418万円、返戻率187%なら約673万円となります。
また日本を除く先進国の保険商品の予定利率も3~5%があたりまえなのです。
なぜなら、そのぐらいの予定利率にしないと投資信託などにお金が流れてしまい、保険がまったく売れなくなってしまうからなのです。
ですから長期の契約において常識的な利回りは3~5%と考える必要があります。
日本にも徐々にインフレが来つつあり、今後30年間を見通せば必ずインフレとなりますから、この考え方から史上最低利率かつ長期固定金利である現在の介護保険と年金保険は買ってはいけない商品と言えます。
もしインフレとなった場合、現在の介護保険や年金保険がどうなるのか試算してみました。
月額保険料はどうなるのか
将来インフレとなり、予定利率が5%(実質4%)となった場合、同じ給付額でも月額保険料は現在よりも格段に安くなります。(つまり同一の保障内容の保険でも格安のものが売られることになります。あなたの保険料はそのままで、新規に加入する人の保険料がすごく安くなります。)
現在
給付額418万円、返戻率116%とすると・・・月額保険料は10,000円
将来
給付額418万円、返戻率187%とすると・・・月額保険料は6,200円
物価はどうなるのか
インフレ率を2%と仮定すると、30年後の物価は1.81倍になります。
従って、30年後に満期となった年金保険から418万円受け取っても、物価が高くなっているため実質的な価値は約230万円に減ってしまいます。(つまり実質的な返戻率は64%に下がります)
2015/7/1より一時払い終身保険の標準利率が1.0%から0.75%に切り下がります。ますます増えない終身保険となってしまいます。
2 タンス預金のほうが使い勝手が格段に良い
東京海上日動あんしん生命の「長生き支援終身」が売れているようですが、人気の理由は、万一の場合(死亡保障)の他に、介護保障、健康祝い金など多様な給付形態が提供されていることにあるようです。
でももしタンス預金をしていたら、返戻率は100%と多少見劣りしますが、介護費用、マンション購入費、旅行費用、入院費用、・・・と、いつでも、何にでも使えるお金になります。
そしてもしインフレとなり、銀行の定期預金(3年)の金利が6%となったら、タンス預金をまるごと預けると、3年後の返戻率は119%にもなります。
30年という長い期間で考えれば1度ぐらいはそのようなチャンスは来ると考えてよいと思います。
したがって私は、現在の介護保険や年金保険がタンス預金よりも優れているとは言えないと考えています。
3 公的年金に勝てる年金保険はない
詳細はこちらをご覧ください。
「確定利回り43%・・・なぜ使わない!」
4 公的年金の上乗せとしては確定拠出年金がおすすめ
企業型、個人型がありますが、加入資格についてはこちらをご覧ください。
5 介護に備えるなら医療保険+貯蓄
女性の場合、各年齢において要介護2以上となる割合は、
40歳~64歳・・・0.21%
65歳~69歳・・・1.32%
70歳~74歳・・・2.62%
75歳~79歳・・・5.71%
80歳~84歳・・・12.41%
85歳~89歳・・・25.04%
90歳~94歳・・・44.16%
96歳以上・・・・・66.42%
厚生労働省「介護給付費実態調査2012年度」
女性の平均寿命は86.44歳(平成21年簡易生命表)ですから、平均寿命を過ぎる年齢から要介護状態となる割合が急増しています。
この資料より、40歳の女性では介護状態となるのは80歳以降と考えてよいので、それまでの40年間は貯蓄がもっとも適切な備え方と言えます。
もし介護保険として積み立てた場合、利回りは最低であり、お金がもらえるのは約款に書かれている場合だけとなりますから、生活に困った場合やリフォーム費用などとして自由に使うことができません。
貯蓄では時々の状況に応じて、より高利回りの預け先に替えることで、40年間で120%の返戻率を実現することはそれほど困難なことではありません。
したがって40歳の女性では、当面は乳ガンのリスクへの準備、60歳以降は老後生活及び入院リスクへの準備が必要で有り、介護については、老後生活のための生活費をしっかり確保することで備えることが賢い方法と言えます。
30代、40代の独身女性にとって将来への不安がとても大きいことと思います。
でも人生は長く、今あなたが考えている明るくはない未来だけが待っているのではありません。
もしかしたら3年後には結婚しているかも知れません。
5年後には、海外で生活しているかも知れません。
長い人生ですから、引っ越しすることも当然あるでしょう。
明るい未来を信じて、そのための様々な選択支に柔軟に対応できるよう、心もお金も固定してしまわないことが大切です。
参考
人生の後半で必要な医療費と介護費用はいくらか
介護保険の基礎
介護保障は必要でしょうか?
お得な自分年金の作り方
保険や家計全般の見直し相談についてはこちらをご覧ください。