2014年8月18日月曜日

「貯蓄があれば保険は不要」の嘘・・・の検証

8月11日付「マネーの達人」のコラムについて考えて見ました。


コラム氏の主張は整理すると以下の論点のようです。

○生命保険は「相互扶助」であり「非定型・非定量」的なリスクに対処する場合に有効

○高額療養費制度があっても貯蓄が少なければ明日や明後日に起こるリスクへの備えが必要

○人生にはいろいろなリスクがあり、治療費以外の支出が必要。長期入院による収入の途絶、後遺症による離職、要介護状態など

○そのための費用は300万円では足りない場合もある。

○リスクの性質や規模にバラツキがあるのだから、特定の個人にとって平均値化した数値には意味が無い。

○「非定型・非定量」的なリスクに対処するのに最も有効な手段が生命保険

○生命保険とは、「万が一当たれば、保険金が支払われる宝くじ」であり損とか得とかの見方がある訳がなく、「オプション」や「権利」の内容・要件が、各社各様で一社も同じものがない訳ですから、それぞれの価格に見合うかどうかの議論があるに過ぎない


1 「非定型・非定量」的なリスク・・・?

 コラム氏は、「非定型・非定量」的なリスクとはリスクの内容や規模がはっきり決っていないリスクといっています。

 病気をしたときの経済的損失は、単に「病気の治療費用」だけでなく、収入の途絶や、長期入院、後遺症、要介護、最悪は失職する場合などもあり、連想ゲームにより考えれば考える程、キリがなくなるので、リスクの内容や規模を最初から特定はできないと考えているようです。


 まあ心配性の人はそうかも知れませんね。

でもそのような人はあらゆる保険に加入しなければ気が済まなくなるのではないでしょうか。

そうしたら月額保険料が給料では足りなくなることは十分に想像ができます。

 でもはっきり言って、保険を設計・販売している保険会社では、保険とは厳密に「定型・定量」化して商品化しています。

 保険会社は、どんな場合に保険金を支払うのかを詳細に「約款」書き、書いていないことには一切保険金は支払いません。

 そのため、アクチャリーは約款の条項すべてについて定量的に計算し、純保険料を算出しているのです。

 もしそうではない「非定型・非定量」的な保険があるとしたら、その保険会社は博打の胴元になってしまいます。


2 人生にはいろいろなリスクがある!

  だから何?
 あらゆる保険に入りましょう!ってことなの?

 この論理は保険営業のセールストークそのものです。

 相手の不安を煽り、身近な事例を紹介し、架空の話ではないことを実感させ、・・・ですから保険が必要なんですと売りつけるやり方です。

 私も保険会社に居ましたから、このシナリオは使っていましたが(^^;)・・・

 でもこの言い方は少し乱暴で、本当の営業のプロはよりエレガントな言い方をしていました。

 いずれにしろ営業トークですから無視するのが適切な対応の仕方だと思います。


3 特定の個人にとって平均値化した数値には意味が無い?

一人一人の人間は、リスクの性質や規模にバラツキがあるのだから、平均値がどの人間にもあてはまる訳ではない、というのはそのとおりです。

 結果論として「保険に入っておけば良かった。」という事例は当然あります。

でもこの論理が問題なのは、事前に一人一人の将来がどうなるのか分からないことなのです。

 将来自分ががんになり、そのがんが転移し、5回も手術を受け、寝たきりになり、仕事もなくなり、離婚し・・・連想ゲームには際限がありません。

もし確実にそうなるのなら、そのための保険に加入することもよいでしょう。

でも一人一人が将来どうなるのかは分からないのです。

 そうすると全員が起こりそうもない0.01%の可能性(いわゆるテールリスク)のために、あらゆる保険に入らなければなりません。

 連想ゲームにより心配事は無限にあるのですから、どうやって保険を選ぼうと言うのでしょう。

 毎月支払える金額には限度があることが分かっていないのではないでしょうか。


4 それぞれの価格に見合うかどうかの議論?

 コラム氏の論理では、どの保障を選ぶのかの評価要素が欠けています。
  どのように「価格に見合う」と判断するのかの観点を述べていません。

 私には「高額なテールリスクにはすべて備えなければならない」と言っているように思えます。

 月に1万円しか支払えない人に、コラム氏は何とアドバイスするのでしょう?

  妄想を広げるのは勝手なのですが、「価格に見合う」と判断する基準がないものは、保険の選び方としてはまったく役に立ちません。

  総じてコラム氏の論理には、コストパフォーマンスの視点が欠けています。


5 生命保険は宝くじ、買わなきゃ絶対当たらない!

  それはそうだと思います。

 それに保険はコラム氏の言うとおり「オプション取引(売建)」そのものです。

参考
「オプション取引」とはデリバティブの一種で、株式などを特定の値段で売るまたは買う「権利」を売買することです。

 オプション取引と保険について、コラム氏の触れたがらないコスト(手数料)で比較すると、「オプション取引」は手数料が0.42%ですが、保険は57%(原価率43%)なので、保険はオプション取引よりも100倍も高い手数料を取っています。

なぜそんなに高いのかって?
だって一軒一軒営業職員が訪問し、必要性を感じていない人たちを説得しながら保険は売られているのでとても手間暇がかかるからなのです。

  宝くじは買う必要性は議論になりませんが、生命保険は「リスクの移転」になり、万が一の場合人々を救ってくれるとても大切な買い物(高い買い物)であり、どのような保障を買うべきなのか慎重に選ばなければなりません。

 何かあったら「当たり」がもらえるので兎に角買っておきましょう・・・ではいいかげん過ぎると思うのは私だけでしょうか?