2012年3月27日火曜日

医療保険を選ぶ基準を考えて見ました(その2)


(図はクリックすると拡大します。)

いろいろなケガや重い病気となったときの自己負担額と給付見込額(独自推定)を比較してみましょう。

比較したのは、ライフネット生命の終身医療保険「じぶんへの保険」の入院給付金5千円と1万円(いずれも60日型、手術付き)及びアフラックの新EVERです。

新EVER(ベースプラン)は入院給付金5千円、特約として長期入院、三大疾病、先進医療を付けています。

保険料は、それぞれ表に示したとおりです。
前提は50歳男性の場合です。

ケガ・病気については次の6種類について自己負担額と各保険商品からの給付見込額を比較しています。

足の骨折
虫垂炎
胃がん乳がん
心筋梗塞
脳梗塞

自己負担額については、それぞれのリンク先をご覧ください。

それでは上図下側のレーダーチャートをご覧ください。

中央の薄紫色の六角形が自己負担額100%の範囲になります。
この範囲の外側なら自己負担額よりも多く保険からの給付金がもらえることになります。

最初にライフネット生命の「じぶんへの保険」入院給付金5千円タイプを見てみます。

虫垂炎と足の骨折はわずかに100%範囲の外側になっていますが、胃がんなどの主要な病気では50~60%程度の給付額となっています。

これは「じぶんへの保険」が高額療養費を前提に、保険診療の自己負担額をカバーできる給付金という考え方で保険が設計されているためです。

この考え方から胃がんなどの主要な病気の場合の医療費の自己負担額と「じぶんへの保険」からの給付見込額を比較すると、

胃がん  医療費 96,261円  給付見込額  230,000円
乳がん  医療費 93,429円  給付見込額  225,000円
心筋梗塞  医療費 186,410円  給付見込額  260,000円
脳梗塞  医療費 182,993円  給付見込額  255,000円

入院日額5,000円でも手術付きなら医療費の自己負担額は十分カバーされていることが分かります。

しかし、一般的に考えて差額ベッド代等の自己負担額が0円となることはありませんから、重大な病気などへの備えとしては不十分と言わざるを得ません。

では「じぶんへの保険」入院給付金1万円タイプはどうでしょう。

胃がんを除けば、ほぼ自己負担額(医療費+差額ベッド代他)をカバーできています。

一方、虫垂炎や足の骨折では自己負担額の約1.4倍から1.7倍の給付額となっています。
これは、手術給付金10万円が一律に給付されるためです。

この結果、軽易な入院・手術で「じぶんへの保険」は、保障が手厚く(ムダな保障)なっています。
このムダのために保険料が新EVERに比較し2,018円高くなっています。


なぜ手術給付を一律としたのか分かりませんが、ライフネット生命社内における診査能力の制約なのか、あるいは事務の効率化のためなのか。

いずれにしろ、手術給付を「一律」としたことで割高な保険料となっているので、保険設計の間違いと言えます。


アフラックの新EVERはどうでしょう。

胃がんなどの主要な病気では自己負担額をほぼカバーできています。
これは開頭、開胸、開腹手術などの重大手術では20万円の手術給付があり、また三大疾病特約により入院が1日1万円給付されるようにしているためです。

一方、虫垂炎や足の骨折では自己負担額の70%から85%程度の給付となっています。
これは手術給付の倍率が低いためです。

しかしこの場合の自己負担額との差額はいずれも5万円ですから、特約をさらに付けるよりも貯蓄で対応した方がトータルでお得になります。

さて新EVERについては、ご覧のとおり全体として特約を活用し給付バランスをうまく取れるようにしてみました。



保険の善し悪しは給付と保険料のバランスが大事ですから、この3種類の保険についてコストパフォーマンスを計算してみました。
コストパフォーマンスの内容は、保険料1円あたりの累計の給付見込額となっています。

表の下段に数値を示しています。(数値の値が大きいほどよい保険と言えます。)
(コストパフォーマンスの細部についてはこちらをご覧ください。)

この数値より、同じ保険料なら、新ENERはじぶんへの保険の1.3倍(=418÷316)給付金がもらえることになります。

じぶんへの保険は原価率が74~81%と高く良い保険です。
しかし給付についてはばらまき(一律給付)となっていますから、ここで取り上げた3大疾病の場合には保障が薄くなってしまっています。

1000種類の手術すべてについて同様のコストパフォーマンスを算出したら、たぶんじぶんへの保険のコストパフォーマンスはかなり高くなるものと考えますが、やはり保険はいざというときに役に立つかどうかで私は善し悪しを判断したいと考えています。



さて以上から医療保険を選ぶ基準(目安)として、次のプランを提案します。

プラン 1
入院日額 5,000円
三大疾病 5,000円
手術   20万円(給付倍率のあるもの)
自営業の方は、入院1万円とされたほうが良いでしょう。

プラン 2
入院日額 10,000円
手術   10万円(給付倍率のあるもの)
自営業の方は、入院1.5万円とされたほうが良いでしょう。

その他特約
先進医療
長期入院(三大疾病)

参考
入院限度日数についてはこちらをご覧ください。

この基準に沿っていれば、原則として「がん保険」や「女性特約」などは不要です。


次回は生涯を通じて支払う累計保険料について考えて見ます。

医療保険を選ぶ基準を考えて見ました(その1

医療保険を選ぶ基準を考えて見ました(その3

医療保険を選ぶ基準を考えて見ました(その4


参考
コストパフォーマンス値


保険や家計全般の見直し相談についてはこちらをご覧ください。