2010年6月23日水曜日

医療保険に「移植医療保障特約」は付けるべきか

平成22年7月17日から改正「臓器移植法」が施行されます。

主な改正点は、
○臓器摘出に係る脳死判定の要件が緩和
○15歳未満の方からの臓器提供が可能
○運転免許証等への意思表示の記載を可能にする等の施策

これまでの「臓器移植法」は脳死判定の要件が厳しく、国内での臓器移植があまり進んでいなかったため、これを緩和し臓器移植を促進することで、救える命を増やそうとするものです。

臓器移植について、これまでの実施累計は、
心臓移植:64例(海外での移植数が137人)
肝臓移植:5,252例(生体肝移植5,188例、脳死肝移植64例)
腎臓移植:年間1,201例(生体腎移植991例、献腎210例)
膵臓移植:69例
肺移植:129例
となっています。(日本移植学会、臓器移植ファクトブック2009

極めて少ない症例の背後には、移植を待ちながら亡くなられた多くの方々がおられます。
この法律改正により、国内での移植医療の拡大が大いに期待されています。

移植医療に必要な医療費の現状は、2006年から2008年にかけて、そのほとんどに保険が適用され、多くの場合、自己負担は発生しなくなっています。

一方海外において心臓移植を受けた場合は、5,000~14,000万円もの高額な費用が必要です。
また、国内の心臓移植において、脳死患者から臓器提供を受ける場合、心臓採取術費493,000円、脳死臓器提供管理料142,000円及び心臓採取医療チームの交通費ならびに臓器搬送費(チャーター機の場合には100~400万円)については保険が適用されるものの、患者負担として3割分を支払わなければなりません。

臓器移植ではありませんが、移植医療では骨髄移植が一般化しており、22年5月末時点で骨髄バンクを介した骨髄移植が累計11,763例となっています。

この場合、通常医療保険からの給付は被保険者本人の入院や手術について給付されますが、骨髄を提供するドナーの入院や手術費等も受容者(レシピエント)の負担となります。
注:プルデンシャル生命の医療保険の特約には「骨髄ドナー給付限定特則」があります。

高額となる移植術ですが、これには高額療養費制度が適用され、自己負担額は低く抑えられるものの一時金として250万円から300万円の支払が発生します。(事前申請により窓口支払時点で高額療養費制度が適用される手続きがあります。)

高額療養費が適用されるのは健康保険の適用が認められている手術等に限られます。
保険適用が認められていない、たとえば先進医療として区分される医療技術には適用されませんから、全額が自己負担となります。
この場合、医療保険に先進医療特約が付けられていれば、技術料相当額が給付されます。

また、移植医療の特質として、移植後に拒否反応を抑える免疫抑制のための治療が長期間行われ、このための費用負担と収入が途絶してしまう場合があります。

医療保険からの給付について、白血病・心臓病は三大疾病、肝臓・腎臓・膵臓は7大疾病または生活習慣病の特約により医療費負担がカバーできる場合がありますが、免疫抑制のための通院治療費などの負担も考えると、移植医療に適合したバランスのよい特約とは言えません。

また、手術給付の88種類には、腎移植が含まれますが、給付対象はレシピエントに限られています。

移植医療保障特約が付けられる保険は、まだまだ限られており、私の調べた限り次の5社だけでした。
○AIGエジソン生命のケアード(終身)
特約保険料 145円(加入年齢にかかわらず一律、80歳まで)
通算500万円まで
対象となる移植術:心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、小腸、骨髄
給付額は移植技術料の100%(腎臓と骨髄は60%)

プルデンシャル生命の新医療保険(骨髄ドナー給付限定特則付)
骨髄幹細胞採取手術(骨髄を提供するドナーの手術)に対して手術給付金が支払われる。
保険期間(更新後の期間を含む)を通じて1被保険者につき1回のみの支払。

アリコのこども医療保険
通算500万円まで
保障期間:お子さまが22歳まで
対象となる移植術:心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、小腸、骨髄

日本生命のマイメディカルEX(重度疾病保障特約)
対象となる移植術:心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、小腸(臓器が対象)
特約重度疾病保険金額  1回

フコク生命の移植医療特約
移植医療給付金 最高1,000万円(腎臓と骨髄は300万円)
骨髄移植のドナー  30万円
対象となる移植術:心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、小腸、骨髄

明治安田生命の明日のミカタ+(医療費リンクシリーズ)
移植医療の特約はありませんが、移植医療や先進医療にかかわらず、診療報酬の3割が給付されます。

アフラックの総合先進医療特約
明確な移植医療保障特約ではありませんが、先進医療に取り込まれています。
HLA抗原不一致血縁ドナーからのCD34陽性造血幹細胞移植 130万円

移植医療保障特約は、現状ではまだまだ移植術の件数が少なく、保険料が割安で、かつ高額な保障となっていますし、将来的に移植医療の進歩拡大も期待できますから、今の内に付加(終身タイプ)されることをお勧めします。


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