2016年11月10日木曜日
乳ガン検診(マンモグラフィー検査)の真実
あなたがもし乳ガン検診を受けられて、後日「陽性」の判定と共に「要精密検査」という結果を受け取られたとしたらいかがでしょう。
まさか・・・私が
そんなばかな!
家族に何と言ったらいいのか・・・
・・・かなり深刻に受け止められるのではないでしょうか。
でも一部には「実際に乳ガンである確率はそれほど高くない。」とも言われています。
真実はどうなのでしょう?
以下は乳ガン検診について統計的な見方から分析したものです。
参考文献
「リスク・リテラシーが身につく統計的思考法:ゲルト・ギーゲレンツァー」(ハヤカワ文庫ノンフィクション)
「統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる:高橋洋一」(光文社新書)
最初に前提を次のとおりとします。
○マンモグラフィー検査を受けた人で乳ガンと診断される確率はおよそ9%とします。
○乳ガン検査を受ける人の中で本当に乳ガンである人の確率はおよそ1%とします。
○一般の人100人がマンモグラフィー検査を受けた場合で試算
注意
使用している数値は必ずしも正確な値ではありません。計算上仮に設定した値です。
この前提より、
女性100人について、乳ガンである確率が1%ですから、この中の1人は乳ガン患者です。
残りの99人(乳ガンではない人たち)がマンモグラフィー検査を受けると、その9%つまり9人が「陽性」と判定されます。
この結果より、100人の女性がマンモグラフィー検査を受けると、10人の人たちが「陽性」と判定され「要精密検査」の知らせが届くことになります。
しかし「要精密検査」の知らせが届いた人たちの中で本当に乳ガンである人は1人ですから、この場合の確率は10%(10人あたり1人の割合)なのです。
「要精密検査」の知らせが届いても、精密検査を受けることで大半の人たちは乳ガンではないことが分かるのです。
ですからマンモグラフィー検査だけではあまり診断精度が良くないと言うことができます。
だからといって私はマンモグラフィー検査はいらないとは考えません。
マンモグラフィー検査を受けることで早期に乳ガンが発見され命を救われた人たちがいるのですからこの検査をする意味はあるのです。
マンモグラフィー検査に限らず医療検査機器については完全なものはなく、すべての検査機器には一定の誤差(検査ミス)があります。
ですから1度の検査で「要精密検査」となったからといってすぐにガンがあると考えることは早計です。
このため医師は2回目、3回目と様々な精密検査を行って初めて正確な診断を下すのです。
では2回目、3回目の検査により診断精度がどれほど向上するのか。確率から考えて見ましょう。
例えば、ある検査機器Aの検査精度は91%とすると、9%の確率で誤診が発生します。
9%の確率とは、たとえば1万人が検査を受けると、異常が無くても900人がガンの可能性があると診断されます。(反対にガンがあっても見逃される可能性もあります。)
また検査機器Aと検査方法が異なっている検査機器Bについても検査精度が91%とします。
そこで、Aの検査の後、続けてBの検査を受けた場合、誤診される確率は計算上0.81%(1万人を検査して誤診が81人発生する)と劇的に下がります。
9/100×9/100=81/10000=0.81%
検査精度が91%の別の検査機器Cも使って3回続けて検査を行うと、誤診の確率は、
0.81%×9/100=0.0729%
(1万人を検査して誤診が約7.3人発生する)
このように1回の検査だけではある程度の誤診がありますが、2回3回と異なる検査をすることで、誤診の可能性を極限まで小さくすることができます。
参考
現在乳ガンの検査に使用されている検査機器等の特性は次のとおりです。
○視触診
ある程度進行した乳ガンを発見することは出来るが、早期に発見することが困難なため乳ガン死を減らす効果はない。
○マンモグラフィー
X線の透視画像より乳ガンの早期発見ができ、死亡減少につながる検査機器であり、コストパフォーマンスがよいため、乳ガン検診に用いられている。(マンモグラフィー検査は脂肪の多い欧米人向きであり、日本女性の場合脂肪が少ない(乳腺が濃い)乳房であるため、マンモグラフィ検診の効果は少ないとも言われています。特に若い女性は乳腺が濃いためマンモグラフィ検診の効果はより低くなります。)
○超音波(エコー)
超音波により乳ガンを発見することは出来るが、その効果を証明する実証データが得られていない状況にある。
○MRI
乳ガンの発見率が最も高いと言われているが、十分な検証結果が得られていないことと、高コストであるため乳ガン検診としては使われていない。
前記の試算は仮定の数値にもとづく値ですが、実際の乳ガンの罹患データ(女性10万人のうち乳ガンと診断された人数)は次のとおりです。
(地域ガン登録全国推計によるガン罹患データ1975年~2012年:がん情報サービス)
<2012年の罹患データ>
20歳-24歳 1人(0.001%)
25歳-29歳 7人(0.007%)
30歳-34歳 25人(0.025%)
35歳-39歳 66人(0.07%)
40歳-44歳 130人(0.13%)(女性1000人あたり乳ガン患者は約1人)
45歳-49歳 214人(0.21%)(同上 約2人)
50歳-54歳 188人(0.19%)(同上 約2人)
55歳-59歳 186人(0.19%)(同上 約2人)
60歳-64歳 205人(0.21%)(同上 約2人)
65歳-69歳 195人(0.2%)(同上 約2人)
70歳-74歳 181人(0.18%)
75歳-79歳 163人(0.16%)
80歳-84歳 143人(0.14%)
85歳以上 139人(0.14%)
45歳-49歳の年齢階級で見ると、この年代の女性10万人のうち本当に乳ガンと診断された人が214人(1000人の場合にはおよそ2人)いたことになります。(マンモグラフィ検査ではこの数倍~10倍程度の人数が「陽性」と判定されることになります。)
参考 女性の一生涯で乳ガンになる確率(2012年)
乳ガンの罹患率は一生涯で12人に一人(累積確率8.3%)と言われています。
私が独自に累積確率を計算した結果は次のとおりです。
累積確率とは、例えば女性が100人生まれたとすると、この100人のうち44歳までに乳ガンになる人が1人の場合、44歳までの累積確率が1%になります。
以下で示した人数は女性100人がその年齢になるまでに乳ガンになった合計人数を示しています。
35歳-39歳 0.5%
40歳-44歳 1.2%(0歳~44歳の間に約1人が乳ガンになる)
45歳-49歳 2.2%(0歳~49歳の間に約2人が乳ガンになる)
50歳-54歳 3.2%(0歳~54歳の間に約3人が乳ガンになる)
55歳-59歳 4.1%(0歳~59歳の間に約4人が乳ガンになる)
60歳-64歳 5%(0歳~64歳の間に約5人が乳ガンになる)
・・・・・・・
85歳以上 8.8%(女性の一生涯で100人の女性のうち約9人が乳ガンになる)
以上より、「要精密検査」の知らせはそれほど怖くはないのです。
万一精密検査の結果乳ガンだとしても早期発見により死亡するリスクを減らせるのですから、むしろ安心してよいのではないでしょうか。
今ではガンは克服できる病気となりました。
怖いからと言って検診や精密検査を避けることは早期発見のチャンスを失い死亡リスクを高めることになりますから、むしろ積極的にこのチャンス生かすことがよいと思います。
またセカンドオピニオンも良いのですが、3回の検査から診断した医師と1回だけの検査から診断した医師では、確率として3回の検査から得られた診断の方が正しいと言えます。
以上ご参考としてください。
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