2012年9月11日火曜日

アイエヌジー(ING)生命保険の「Smart Vision(スマートビジョン)」はお得か?


2015年4月1日付でアイエヌジー生命は、エヌエヌ生命保険株式会社に商号(社名)を変更
エヌエヌ生命(ナショナーレ・ネーデルランデン生命保険株式会社)


「Smart Vision」はちょっと変わった保険です。

一時払いの終身入院保険なのですが、10年経過後に解約すると元本が100%返ってきます。

つまりその間の医療保険が「タダ」になるのです。

しかもこの間、元本に相当する額の死亡保障も付けられています。

銀行に預金していてもほとんど利子が付きませんから、タダで医療保険が付くのならとてもお得と言うことで、銀行や証券会社などの窓口でさかんに販売されています。

でも世の中には「うまい話」はありませんから、しっかりと損得を見極めてから判断しなければいけません。


以下具体的に「Smart Vision」のしくみを分析してみます。

まず入院保障のコストを試算します。

前提は50歳男性
入院保障のコスト計算にはライフネット生命「じぶんへの保険」(60日型)を使います。

じぶんへの保険は、入院給付金1万円、手術なしの場合、50歳男性の月額保険料は5,706円となります。

この保険料から平均余命31.5年間の累計保険料は

5,706円×12月×31.5年=2,156,868円

ライフネット生命よりこの場合の純保険料(原価)は79%と公表されていますから

2,156,868円×79/100=1,703,926円

約170万円が入院保障のためのコスト(給付合計額=契約者受取額)となります。

ちなみに厚労省のデータ「人口一人当たり国民医療費」より、この間の患者の自己負担合計額は約214万円となりますから、170万円は給付額としては少し足りない金額です。

参考
「Smart Vision」からの医療給付は「入院」だけで手術や先進医療などの給付はありません。したがって入院日額1万円だけでは三大疾病などの高額な入院費用への備えとしては不足しています。詳細はこちらをご参照ください。

さて「Smart Vision」で入院給付金を1万円とするには一時払いの金額が580万円となります。

50歳のときに一時払い580万円で契約し、平均余命まで生存し、死亡保険金を580万円もらった場合の返戻率は次のとおりです。

(170+580)/580×100%=129.3%(返戻率)

この返戻率がお得なのかどうか比較するためニッセイの終身保険「マイステージ」の返戻率を試算してみます。

一時払い金額を579万円、保険金額790万円とすると

790/579×100%=136.4%(返戻率)

返戻金額として「マイステージ」の方が40万円多くなります。


60歳時点についても同様に試算してみます。

前記と同様にライフネット生命「じぶんへの保険」に60歳で加入した場合の純保険料は、

8,087円×12月×21.5年=2,086,446円

2,086,446円×80/100=1,669,157円(純保険料)

50歳から60歳までの「じぶんへの保険」からの給付合計額=契約者受取額は、
50歳のときの純保険料から60歳のときの純保険料を差し引いた金額となるので、

170万円-167万円=3万円

したがって「Smart Vision」の入院給付金は3万円、解約返戻金が580万円として

(3+580)/580×100%=101%(返戻率)

ニッセイの「マイステージ」では、60歳時点で解約返戻金が618万円ありますから

618/579×100%=106.7%(返戻率)

60歳時点においても返戻金額は「マイステージ」の方が35万円多くなります。


以上の試算より、返戻率から判断すると、「Smart Vision」よりも「マイステージ」の方がお得なのは明らかです。

ですから「Smart Vision」は入院保障がタダだからお得ということはありません。

「Smart Vision」は「お得」かどうかの判定では普通の(多少見劣りする)保険商品です。

ただこの保険の特徴として、給付金の形態が「解約返戻金」ではなく「入院保障」となっているだけの違いなのです。

いずれを選択するのかは契約者の「お好み(目的)」次第です。


最後に私はこの商品をお勧めするかと問われれば・・・お勧めしません。

理由は契約期間が超長期の固定金利商品だからです。

FPの常識として、低金利のときは短期運用が原則なのです。


保険や家計全般の見直し相談についてはこちらをご覧ください。