2010年5月24日月曜日
『アクサの「収入保障」のがん保険』はお得か?(その3)
3 がんの罹患率
図は、男女別のがんの罹患率を示しています。
データは、国立がん研究センターがん対策情報センターの「全国がん罹患数・率推定値1975-2004年」を使用しています。
図の見方として、罹患率は年齢階級ごとに、がんに罹患した数を性別の人口で割り、10万人当たりの数値としたもので、罹患率が1000は性別の人口に占める割合が1%に相当します。
図から、50歳までは女性の罹患率が男性を上回っており、その原因として「乳がん」が女性のがんの約4割を占めている(ほぼ男性の罹患率と同程度)ためです。
男性は、50歳台で女性を越え、60歳以降急激に罹患率が上昇しています。
女性は、男性に比較し緩慢ながら60歳以降上昇しています。
男女とも60歳以前の罹患率は1000(1%)以下となっています。
以上から、がんへの備えは60歳から、女性は60歳前は乳がんへの注意が必要であると言えます。
さて病気全体については、平成20年患者調査の入院受療率(人口10万対),性・年齢階級×傷病分類別によると、
入院患者総数 1090人(100%)
悪性新生物 111人(10.2%)
脳血管疾患 156人(14.3%)
虚血性心疾患 15人(1.4%)
糖尿病 20人(1.8%)
高血圧性疾患 7人(0.6%)
平均在院日数は、
胃がん 35日
乳がん 13日
脳血管疾患 102日
虚血性心疾患 28日
糖尿病 34日
高血圧性疾患 41日
となっています。
注目は、脳血管疾患です。
入院受療率で悪性新生物を上回り、かつ入院日数も身体の機能麻痺によるリハビリ等により102日と長く、医療費及び収入保障ともその手当が考慮されなければなりません。
入院日数等については、病院情報局のDPC全国統計(傷病別統計データ)が最新です。
参考
医療保険とがん保険を検討するときに参考となる入院日数、医療費等の資料
4 安心できる医療保険とは
がんについては、入院患者が多く、また死亡率も高いため国民が最も感心が深い病気だと思います。
そのため、医療技術や新薬開発が急速に進展し、(その1)で記しましたように重粒子線治療、免疫療法、分子標的薬等が開発、治検、評価(先進医療)、保険適用等のさまざまな段階において先行的、普及的に医療サービスが行われています。
現在の医療保険では、保険が適用される医療行為(診断、治療等)に対してのみ、保険給付されることが原則ですが、先進医療については保険適用外ながら、厚労省公認の混合診療なので給付を行うこととしている訳です。
これは、給付対象を明確にし特定することで、給付に制限を加え、結果として保険料を割安にするためです。
アクサ生命の「収入保障」は、がんの診断を前提に、医療行為の中身を問わず一定額が給付されますから、入院日数が少なく費用負担の重い免疫療法などの自由診療には最適のように思われますが、保険が適用される何百種類もあるがんの治療に対しては、過大な保障と言わざるを得ません。
投稿の(その1)で私が疑問点を述べましたが、この保険は、「40代の女性が乳ガンとなり、仕事を長期に休まざるを得ない状況」を想定し、作られているのではないでしょうか。
つまり、保障の対象が「ピンポイント」なのです。
でも、絶対に乳ガンになると分かっている人はいませんし、むしろどんな病気やケガになるか分からないのが人生です。
ですから、がんよりも費用負担が重く、収入への影響が大きいと思われる脳血管疾患などの他の病気にも、保障が必要ではないかと考えます。
そして、その保障は、これからがんがほんとうに心配となる65歳以降の期間をちゃんとカバーしてくれないと不安ではないでしょうか。
確かに、DPC全国統計(傷病別統計データ)によると、最新技術である内視鏡手術では、胃がんの全摘手術の入院日数が10.8日と従来の1/3の入院日数になるなど、入院日数の短期化が進んでいます。
したがって、保険給付も入院日数型から治療費給付型への進化が必要になると思われますが、えいやっ!とばかりに、がんなら一律600万円給付と言うのは、極めてムダの多い保障と言わざるをえません。
保険ではなく、宝くじを買うようなものです。
安心できる医療保険とは、どんな病気でも怪我でも必要な時期に保障してくれるものがよいと私は考えます。
アクサ生命の考え方自体は正しいものの、最適な保障設計(内容と期間)ができていない現在、効率的で安心できる医療保障とは言えないので私はお薦めしません。
参考
がん保険の選び方(その1)
長期の就業不能に対する保障の必要性
医療保険とがん保険を検討するときに参考となる入院日数、医療費等の資料
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