2010年6月25日金曜日

収入保障保険の保険金受取方法と課税の関係

収入保障保険の保険金の受取方として、年金(月払い)方式と、一括での受取(全額または一部)ができるものがあります。
その際の一括でもらう場合と、年金でもらう場合の課税の違いについて今回は取り上げたいと思います。

税額計算の都合上、つぎの前提にもとづき課税額を試算してみます。
前提
被保険者が40歳で死亡し、遺族に月額10万円が、20年間(被保険者が60歳で満期)支払われる契約とします。

○一括で受け取る場合の課税
まず受け取れる合計金額ですが、単純計算しますと、
10万円×12ヶ月×20年=2,400万円
となります。

しかし、お金は現在の1万円と20年後の1万円では価値がちがいます。
現在の1万円は預金すれば利子がつきますから、20年後に12,000円になっているかも知れません。

したがって、一時金で受け取る場合は、年金現価係数(将来もらえるお金を現在価値に変換する係数)により計算した金額になります。

利率は会社ごとに異なりますが、2%とした場合の20年間の年金現価係数は、
年金現価係数=16.3514
年金額を120万円とすると、一括受取金額は、
120万円×16.3514=1,962万円
(この計算結果(一括受取金額)は、私が無料配布しているソフトの[状況1]の部分で数値を入力すれば分かります。利率を変えて試算して見てください。)

単純計算の金額から438万円も減りますから、だいぶ損した感じですが、金融の世界では常識です。(利率をいくらにするのかは、会社側の良心次第です。)

この場合の保険金への課税は、つぎのとおりとなっています。
死亡した人が、契約者(保険料を払った人)の場合は、相続税の対象となります。

しかし、相続税は配偶者1人だけまたは配偶者と子3人までなら合計した相続財産が1憶6千万円+(5千万円+1千万円×法定相続人数)が無税です。

越えた場合でも、生命保険は500万円×法定相続人数が非課税ですから、ほとんどの家庭(95%)では相続税は0円です。ただし契約者が死亡してから10ヶ月以内に確定申告する必要はあります。

父が死亡し、母は既に亡く、子2人に保険金が支払われる場合は、つぎのとおりです。
相続税の控除額は、
5,000万円+1,000万円×法定相続人数=控除額
子が2人なら、7,000万円が控除でき、また生命保険の控除額が、
500万円×2人=1,000万円
合計8,000万円までは相続税が0円です。

○年金(月払)で受け取る場合の課税はつぎのとおりです。
この場合は、相続税と所得税が関係します。
まず、被保険者が死亡した時点で、年金の「受給権」が遺族に発生しますから、この「受給権」に対する相続税の計算をします。

一括受取ではなく月払方式ですから、相続した財産価値を推定しなければなりません。
単純計算では、受取総額は20年間で2,400万円ですから、相続財産の評価は40%となり、960万円が相続財産の価値と見なされます。

注1:評価割合は、受給期間により5年以内は70%、10年以内60%、15年以内50%、25年以内40%、35年以内30%、35年超20%に決められています。

注2:この相続税法24条による年金受給権の評価減は、法律が改正され、平成22年4月より適用が無くなりました。3月以前の契約で、22年度中に年金受給権を相続した場合は移行期間として継続適用されますが、それ以降については、相続時点の解約返戻金、一時金、年金のうち一番高い金額で評価されることとなります。

「受給権」に対する相続税は一括受取の場合と同様ですから、ほとんどの場合税額は0円です。
つぎに、その後毎月支払われる給付金への課税について説明します。
この収入は雑所得(10種類有る所得税のひとつ)となります。雑所得は給与収入等と合算され総合課税されます。

まず、雑所得の計算式は、
保険給付月額10万円×12ヶ月-「必要経費」=その年の雑所得
「必要経費」は、支払った保険料合計額の1/20になります。(年金として20年間もらえるので、1年当たりの必要経費を計算します。)

保険料は、契約した30歳から40歳までに40万円支払ったとすると、
40万円÷20年=2万円(1年あたり)

したがって、一例として、契約者が死亡した最初の年に6ヶ月分の給付を受けた時の雑所得は、
必要経費が1年当たり2万円ですから、6ヶ月分は1万円となります。
10万円×6ヶ月-1万円=59万円
この金額が雑所得になり、他に給与収入がある場合には加算され、所得税、住民税が課税されます。

注3:平成22年7月6日の最高裁判決により二重課税の認定がなされ、相続した「年金の受給権」については、相続時に確定申告していれば、以後毎年年金として受け取っても所得税は非課税となりました。詳細についてはこちらをご覧ください。

おおざっぱにこの事例について支払う税金を試算すると、合計2,400万円もらい、必要経費40万円を引き、所得税10%、住民税10%とすると、20年間に472万円が税金として取られます。

ですから、一括払いで1,962万円(課税なし、438万円減額)もらうか、月払いの20年間で合計1,928万円(税金が472万円)もらうかの選択となります。

一括払いの方が、現在価格でもらえ、また税金がない分お得かも知れません。(保険会社の適用利率によります。)

注4:平成22年7月6日の最高裁判決により、所得税が非課税となった場合、年金は非課税で全額の2400万円受け取れますから、先に一括払いで1,962万円もらうか、月々10万円、合計2400万円もらうかの選択となります。


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