2010年5月9日日曜日

「予定利率」を知るために



(グラフはクリックすると拡大します。)

2012/12/19更新


基礎から分かる保険(会社)のお話しです。

まず、保険会社は何で儲けているのか?

3つあります。
【死差益】予定した死亡者数を下回ったことにより、保険金の支払いが少ないと利益になります。

【利差益】保険料は、将来の支払に備えその一部(責任準備金)を運用(投資等)しており、予定した利回り(予定利率)を越える運用益がでると利益になります。

【費差益】事務の効率化、経費節減等により浮いたお金が利益になります。

この3利源からの利益を合計したものが剰余金です。保険業法では剰余金の80%以上を契約者に配当することとされています。

大手生保については「逆ざや」がときどきニュースに取り上げられますが、これは利差益がマイナス(契約者に約束した運用利回りを下回っている状態)となっている状況のことです。

図は、予定利率の推移状況を示しています。(図をクリックすれば拡大します。)
1995年以前、保険商品が3%を越えるような高い利回りを保障(予定利率)して販売されており、現在もその契約(終身保険や個人年金保険が主)が多数残っています。

このころに貯蓄タイプの保険を契約した人は、お宝保険ですから、なにがなんでも解約や乗り換えに応じてはいけません。


予定利率がよいころは、契約書に明記されていましたが、最近はどこにも書いてありません。
営業に聞いても分からないと思います。

よい保険かどうかは単純に、付加保険料率が低い(還元率が高い)こと、予定利率が高いことで判断できますが、いずれも公表されていません。

保険もいずれ価格競争時代になると思いますので、契約者側がこの2つを比較できる日はそう遠くないと思います。

「逆ざや」は、リーマンショックのような急激な株価下落等があると拡大し、保険会社の経営に大きな影響を与えています。2000年ころの生保破綻は、この「逆ざや」が大きな原因と云われています。(投資物件の不良債権化も一因です。)

他方、保険会社にとって死差益は救いの神です。
平均寿命は、
平成 2年(1990)に(男75.92歳)(女81.90歳)であったものが、
平成20年(2008)に(男79.29歳)(女86.05歳)となり、

男が3.37歳(+4.4%)、女が4.15歳(+5.1%)も延びています。
したがって、その分保険会社は保険金の支払額が少なくなり大きな利益を得ています。

数年前「保険金の不払い」が問題になりましたが、その原因は単なる事務手続きのミスではなく、逆ザヤ解消のための利益確保(死差益)にあり、保険会社が組織的にノルマとして「不払い」を行っていたのです。
(現在も逆ザヤが解消していない生保には気を付けたほうがよいと思います。)

一方カタカナ生保につては、バブル崩壊後の保険、金融の自由化によって日本に進出(破綻生保の買収等を含む)して来ましたので、その多くは「逆ざや」がありません。
損保も貯蓄性の長期契約がないので「逆ざや」はありません。

費差益については、各社通販や来店型窓口等の販売チャネルの多様化を進めていますが、保険会社はどうしても対面販売の営業社員が主力であるため、これを切らない限りは根本的な経営の効率化は難しい状況です。

保険選びは、予定利率の高い保険がよいのですが、非公表ですし、各社おおむね1.5%程度ですから、現状としては利回りのよい商品は見あたりません。
(個人年金商品などでは外貨建て利率変動型で高利回りの商品があります。)

一方付加保険料は、大手生保が70%(純保険料が30%)に対して、ネット専業保険会社では20~40%(純保険料が60%~80%)ですから、ネット販売されている保険は、保険料が半額以下になります。(大手国内生保の保険料が倍も高い。)
生命保険の原価はこちらをご覧ください。)

もう一つ、保険選びでは会社の経営状況も重要な要素です。
それについては「保険はどのように選んだらよいか(その1)」をご覧ください。


参考
2013年4月より予定利率が1.5%から1%に引き下げられるため、貯蓄性の保険(終身保険や年金保険など)の保険料が値上げされる見通しです。


2013/1/20更新
日本生命保険は2013年1月19日、大半の保険商品の生命保険料を4月以降も据え置く方針を固めたとのこと。大手生保各社も追随か?

2013/1/28更新
本日(1月28日)付日本経済新聞朝刊は、アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)が4月以降も医療保険とがん保険の保険料を据え置くと報じた(記事『アフラックも据え置き 保険料、生保の競争激しく』)。すでに日本生命保険、かんぽ生命保険も主力商品での据え置きを発表しているが、両社に続き3社目となる。



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