世の中にはとても多くの「共済」がありますが、保険とどう違うのかいまひとつ分からない存在なのではないでしょうか。
私もよく知らないので研究してみました。
まず共済とは、「組合」員相互の助け合いのことです。
「組合」とは、たとえば
農業協同組合(JA:農業協同組合法)
全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済:消費生活協同組合法)
全国生活協同組合連合会(全国生協連:消費生活協同組合法)
日本コープ共済生活協同組合連合会(コープ共済連:消費生活協同組合法)
全国大学生協共済生活協同組合連合(大学生協共済連:消費生活協同組合法)
全日本火災共済協同組合連合会(日火連:中小企業等協同組合法)
等があります。
「組合」にはすべて協同が付いており、その根拠は「消費生活協同組合法」であり、
第三条 消費生活協同組合又は消費生活協同組合連合会は、その名称中に消費生活協同組合若しくは生活協同組合又は消費生活協同組合連合会若しくは生活協同組合連合会という文字を用いなければならない。
となっています。
「協同組合」は組織ですから特定の人たちの集まりです。
特定の人たちとは、協同組合に「出資」した人たちです。
「投資」をした人たちではありません。
「投資」は株式会社の株を買うことですが、「出資」は協同組合員になるための会費になります。
「投資」と「出資」の違いは、株式への「投資」は配当(インカムゲイン)がもらえることと、値上がり(キャピタルゲイン)が期待できますが、「出資」の見返りは原則として「施設利用権」なのです。
「施設利用権」とはJAやCOOP(生協)で買い物ができたりすることです。
この関係は別の見方をすると、「協同組合」は出資者と顧客が同じと言えます。
出資者と顧客が同じであり、協同して組合の発達を図るので、そこには「営利を目的としない」ことを原則としています。
消費生活協同組合法 第九条
組合は、その行う事業によつて、その組合員及び会員(以下「組合員」と総称する。)に最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。
というのがその根拠です。
とはいうものの、共済団体の事業概況 (2011年度)によれば、加入団体が6,678会員、組合員合計7,333万人、総資産54兆4,912億円、契約件数1億5,536万件、共済金額1,109兆円、支払共済金8,234億円、となっています。
はたしてこのような巨大な組織、巨額な契約金額がボランティアたちで運営できるのでしょうか。
多くの場合「共済事業」は組合組織から分離独立しており、その業務内容は保険会社とまったく同様です。
ですから共済事業に勤めている人たちは、売り上げにより成績や収入や出世が決まり、理事たちに高額な報酬を支払わないといけないので、共済事業にとって収入を伸ばすことが絶対使命となり、そのため盛んにテレビCMを流し、チラシを配っているのです。
この辺の理解として、「組合員」に対しては最大の奉仕をしなくてはなりませんが、「組合員」ではない新規に募集する人たちについては「営利を目的としてよい」と解釈するのがこの法律の正しい読み方といえます。
つまり言っていることとやっていることが違うのです。
JA共済の新医療共済や全労済のこくみん共済をみるかぎり、保険会社の売っている保険より優れているとは言いがたいものです。
まして「出資」してまで加入したいものではありません。
一方「施設利用権」が「協同組合」の大きな特徴といえますが、別の見方からすると、出資者と顧客が同じなので「出資」者を囲い込みできることにもなります。
このため「協同組合」が政治的に利用されやすい特質もあります。
たとえば生活協同組合は共産党であったり、JAが自民党であったり、全労済が連合系労組であったりします。
共済事業がこのような背後の組織の資金源かどうかはよく分かりませんが、政治献金していることは事実ですし、全労済などは労組幹部(労働貴族)の天下り先になっています。
「投資」と「出資」のもうひとつの違いは、株式への「投資」は会社を所有することですが、「出資」では組織の所有権はありません。
また総会における議決権についても、株式の議決権は原則一株一票で、保有する株数に比例しますが、「出資」した組合員は口数に関係なく総会の議決権は一人一票と違いがあります。
日本生命はいまだに相互会社なので、保険契約者は社員と呼ばれ、社員=顧客の関係となっていますから、株式会社と協同組合の中間的な組織と言えます。
いずれにしろ「協同組合」も「相互会社」も特定グループで組織が閉じられていますから、株式会社に求められているオープンさはないと言えます。
理事への報酬額とか退職する役員への慰労金などをいろいろ探しましたが公表されていません。
つまりこのようなことは組合員だけにしか教えない「秘密」ということのようです。
「共済」事業は、その政治性だけでなく私がいかがわしさを感じるのは、特定グループの中で行われる営利を目的としない事業だから法的規制がゆるく、透明性も低いことが許されているものを悪用し、組合員以外への強力な営業活動を公然と展開し営利を追求していることなのです。
テレビCMを流し、一般消費者を対象に募集活動をするのなら、株式会社と同様にディスクロージャーを行うべきだと私は考えます。
さて「共済」事業について、協同組合は、生活の改善を願う人々が自主的に集まって自らの手で「様々な事業」を行うことができます。
様々な事業とは、、農林水産業、購買、金融、共済、雇用創出、旅行、住宅、福祉、医療などあらゆる分野に及んでおり、「特定の人の集まり」を口実に各種法律の制約を受けることなくなんでもありの状況です。(一般の法律は適用されませんが、個別の法律の規制は当然あります。)
つまり儲かりそうな事業にはなんにでも手をだしているようです。
それらの事業については当然事業計画があり、目標があります。全労済の事業目標の中に「共済の目標件数は、1%の増加を目指します。」と書いてあります。
ですから、結論として「共済」も儲からないとやってゆけないということです。